情熱から、逃れられない。
挑み続ける姿が観る者の胸を熱くする
𠮷田恵輔監督『ヒメアノ~ル』『犬猿』が描く青春映画の傑作

INTRODUCTION

リアリティ溢れる描写で人間の光と影を表現し続ける𠮷田恵輔。30年以上続けてきたボクシングを題材に自ら脚本を書き上げ、「流した涙や汗、すべての報われなかった努力に花束を渡したい気持ちで作った」と語る本作で描いたのは、成功が約束されていなくとも努力を尽くす挑戦者たちの生き様。主演は演技派俳優として確固たる地位を築く松山ケンイチ。同じジムに所属する仲間を東出昌大と柄本時生が演じ、『聖の青春』以来5年ぶりの共演を果たす3人の掛け合いも見所。ヒロインは𠮷田監督作品への出演を熱望した木村文乃。実力派キャストが集結し、理想と現実の間で悩みながら生きる登場人物たちを熱演。夢に焦がれた若者たちの葛藤だらけの青春の日々が、観客の心に深い余韻を残す。
時に人生は残酷だ。
どれだけ努力しても、
どれだけ才能があっても、
約束された成功なんてない。

STORY

誰よりもボクシングを愛する瓜田は、どれだけ努力しても負け続き。一方、ライバルで後輩の小川は抜群の才能とセンスで日本チャンピオン目前、瓜田の幼馴染の千佳とも結婚を控えていた。千佳は瓜田にとって初恋の人であり、この世界へ導いてくれた人。強さも、恋も、瓜田が欲しい物は全部小川が手に入れた。それでも瓜田はひたむきに努力し夢へ挑戦し続ける。しかし、ある出来事をきっかけに、瓜田は抱え続けてきた想いを二人の前で吐き出し、彼らの関係が変わり始めるー。

PRODUCTION NOTE

監督がジムで出会った瓜田のモデルとは?
努力と労力を注いだ、すべての人へ贈る花束
新たな流れも生み出したキャスティング
監督自身が殺陣指導を務める意義
瓜田の背中を、どう美しく撮るか?
ボクシングを知らない人の心も動かす作品に

CAST&COMMENT

松山ケンイチ
瓜田信人役
木村文乃
天野千佳役
東出昌大
小川一樹役
柄本時生
楢崎剛役
監督がジムで出会った瓜田のモデルとは?
 中学生の頃から約30年間、ボクシングジムに通い続けてきた𠮷田監督にとって、「映画監督になり、ボクシング映画を撮ること」は大きな夢であった。その後、31歳で『机のなかみ』(06)で商業映画デビューを果たした監督が、東京・吉祥寺のジムで出会ったのが、本作における瓜田のモデルとなる「4回戦ボクサー(ボーイ)」だった。昼はダイエット目的の主婦を相手にボクシングを教え、夜はジム生らと共に汗を流す。そんな一日中ジムにいる、監督より少し年上の先輩は、とにかく面倒見のいい性格で、絵に描いたような“いい人”だったという。ただ、ボクサーとしての才能は開花せず、そのことについて周りから弄られても、ヘラヘラしているような存在だった。そんな彼がある日を境に、ジムに来なくなった。「2勝13敗」という成績を残して去っていった彼への「今何してる?」という想いが募り、監督は8年前に本作『BLUE/ブルー』の脚本を執筆した。
努力と労力を注いだ、すべての人へ贈る花束
  その4回戦ボクサーや、後楽園ホールで戦うことを夢見て散っていったボクサーたちとともに、𠮷田監督が本作を捧げているのが、数年前から監督が通うジムに入所してきた小川さんの存在だ。プロテストに合格し、試合のセコンドとして付くなど、彼のボクサーとしての成長を見続けてきた監督だったが、彼もまた連敗し、結果を残すことはできなかった。「運と才能も絡んでくるとはいえ、結果を出したチャンピオンも、結果を残せなかった敗者も、努力と労力の分量と流した涙や汗は変わらない。そこに対する花束のような映画を撮りたい」。そんな監督からの熱いエールもあり、小川さんは劇中、東出昌大さん演じるチャンピオンの名前で登場するだけでなく、殺陣協力として監督をサポート。さらに、劇中では瓜田の対戦相手として出演もしている。
新たな流れも生み出したキャスティング
 𠮷田監督が目指した“ボクサー版『トキワ荘の青春』”にプロデューサー陣が賛同し、キャスティングが始まったのは6年前。まるで捨て犬のような表情で、哀愁を醸し出すことができるという理由から、まずは瓜田役の松山ケンイチさんが決定。チャンピオン特有の華々しさを持つ小川役には東出昌大さん、いかにも𠮷田作品らしい可愛げがあり憎めない楢崎役には柄本時生さんが決まり、『聖の青春』以来となる3人の共演が実現した。松山さんはクランクインまでの2年間ジムに通いつめ、東出さんは筋トレによりマッチョな肉体をモノにし、柄本さんはサウスポーだったこともあり、試合展開などに新たな流れが生まれていった。また、木村文乃さんが演じる千佳の揺れる女心に関しては、監督は事前に綿密な打ち合わせを行い、ボクサーの恋人から妻として、応援したい気持ちと100%理解できない気持ちが共存していることを説明。そして、あえて答えを出さず、曖昧な気持ちで演じてもらうプランを提示した。
監督自身が殺陣指導を務める意義
「いちいち口を挟むぐらいなら、自分でやった方がいい」という理由もあり、監督・脚本とともに、殺陣指導も務めた𠮷田監督。『百円の恋』(14)『あゝ、荒野』(17)『アンダードッグ』(20)などで殺陣を担当してきた松浦慎一郎さんが俳優陣をトレーニングする一方、彼らの実力に合わせ、2か月間に渡って、Vコン(ビデオコンテ)を制作。素人目では分からないが、ディフェンスが一瞬でも遅れれば顔面直撃の殺陣など、普通のボクシング映画でやらない、リアルかつスリリングな殺陣を用意した。当たったように見えるのではなく、実際に当てている場面も多く、ひとつ間違えればとんでもないことに。また、ボクシング経験者が見れば、意味のある一発になっているほか、派手なKOシーンなど、あえて映画的でエモーショナルな部分を削いでおり、監督的には「リアルに殺陣を作れば作るほど、地味になった(笑)」とのこと。ちなみに、比嘉役で出演している松浦さんの殺陣も監督が担当している。
瓜田の背中を、どう美しく撮るか?
 クランクインは2019年10月19日。臨場感や生々しさを出すため、全編ハンディカメラを使い、「身体が勝手に動いてしまう瓜田の背中を、どう美しく撮るか?」というラストシーンの逆算から撮影は進められた。主な舞台となる大牧ジムは、中央にリングが設置されていることや機材を入る広さなどを考慮し、埼玉にある「熊谷コサカボクシングジム」で撮影。ボクシング経験者で、脚本執筆当初の小川のイメージだったこともあり、監督から書き下ろし主題歌を依頼された竹原ピストルさんが見学に訪れ、急遽出演シーンが追加された。そして、撮影終盤には“聖地”後楽園ホールにて、多くのエキストラを集めた試合シーンが敢行。まさに体力勝負、長時間の撮影ながら、リングを上り下りし、演出を行った監督からは「ここで撮らないと意味がない。嘘をつくことはできない」という想いが込められた。そして、大きな事故やケガもなく、11月15日に無事クランクアップを迎えた。「結果にかかわらず、努力をし続けた先にある美しさを描き出す。」、作品の根幹を支えるテーマが表現されたラストの瓜田の背中は、作品のハイライトといえる屈指のシーンに仕上がった。
ボクシングを知らない人の心も動かす作品に
 𠮷田監督とは『ばしゃ馬さんとビッグマウス』で組んでいた音楽のかみむら周平さんが、タイトルバックにハマる入場曲タッチの瓜田、なぜかSF映画のような雰囲気が合う小川、性格にも似た明るく楽しいタッチの楢崎といった主要キャラ三者三様のテーマ曲を制作。さらに、「ラストシーンの余韻が残るようにしたい」という監督の意向から、静かな弾き語りで始まり、転調する竹原さんの主題歌「きーぷ、うぉーきんぐ!!」も加わり、愛すべき登場人物たちの生き方とリンクする歌詞とともに高揚感が伝わるエンドロールが完成した。当初の思惑通り、ボクシング経験者ならガツンとくる一作に仕上がった『BLUE/ブルー』だが、監督は「自分との共通項を見出すことで、ボクシングを知らない人の心も動かす作品にもなった」と語っている。
松山ケンイチ
(瓜田信人役)
1985年3月5日生まれ、青森県出身。
2002年に俳優デビュー。2005年に『男たちの大和/YAMATO』(佐藤純彌監督)で一躍注目を集め、続く『デスノート』『デスノート the Last name』(ともに06/金子修介監督)で大ブレイク。2016年には、『聖の青春』(森義隆監督)で第40回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、第59回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は、『怒り』(16/李相日監督)、『関ヶ原』(17/原田眞人監督)、『ユリゴコロ』(17/熊澤尚人監督)、『宮本から君へ』(19/真利子哲也監督)、『ホテルローヤル』(20/武正晴監督)など。公開待機作に、『ブレイブ ‐群青戦記‐』(本広克行監督)、『川っぺりムコリッタ』(荻上直子監督)などがある。
-COMMENT-
𠮷田監督の作品は言語化できない映画言語だと感じていましたが、今回の脚本もそうでした。
自分にはこの脚本を読んだ時の感動を表現する言葉が今でも見つかりません。
撮影までの2年近くの練習期間に、殴り合いの中に生きる意味とはなんなのか考える時間を沢山頂きましたが、それも言語化は出来ませんでした。
ジムには老若男女色んな方が来ます。パンチをミットで受ける事で何を考えているのかはなんとなくわかるようになりました。
そんな事をずっとやっていてうっかり脚本を読む事を忘れていました。助監督の持っている台本がなければ撮影は成立しませんでした。

瓜田は、自分の培ってきた全てを他人になんの躊躇もなく差し出すことができる人です。
敗者は勝者を作り想いを繋ぎます。またその勝者はいつか敗者となり次の勝者を作り繋ぎます。
自分は次の世代に何を繋いでいくのか考えさせられました。
そして今回は殺陣はボクシング狂の𠮷田監督が考えています。監督自らというのはとても珍しいと思います。お楽しみに!
木村文乃
(天野千佳役)
1987年10月19日生まれ、東京都出身。
映画『アダン』(05/五十嵐匠監督)のヒロインオーディションで選ばれ女優デビュー。2014年には第38回エランドール賞新人賞を受賞。同年4月に蜷川幸雄演出の舞台「わたしを離さないで」で初舞台に立つ。2015年には「マザー・ゲーム〜彼女たちの階級〜」でドラマ初主演を果たし、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」では主人公・明智光秀の正室・煕子役を演じている。近年の主な映画出演作は、『ピース オブ ケイク』(15/田口トモロヲ監督)、『RANMARU 神の舌を持つ男』(16/堤幸彦監督)、『追憶』(17/降旗康男監督)、『火花』(17/板尾創路監督)、『羊の木』(18/吉田大八監督)など。公開待機作に、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(江口カン監督)などがある。
-COMMENT-
ずっと素敵だなと思う作品を作られている𠮷田監督とのお仕事のチャンスに、これは面白くなるぞ、とマネージャーさんと喜んだことを覚えています。
松山さんのストイックさと撮影に参加する度にボクサーとして磨き上げられていく東出さん、さらに容赦しない𠮷田監督とのセッションが、お芝居をしているはずなのにリングにいるような気にすらなりました。
一途で真っ直ぐでどうしようもない、そんな゙男゙と言う存在をとても愛おしく思う映画が出来ました。 𠮷田監督のとってもシュールな笑いも楽しめる舞台挨拶も含めて、公開を是非お楽しみにして下さい。
東出昌大
(小川一樹役)
1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。
『桐島、部活やめるってよ』(12/吉田大八監督)で俳優デビューし、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された『寝ても覚めても』(18/濱口竜介監督)では主演を務め、第77回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した『スパイの妻』(20/黒沢清監督)にも出演。近年の主な映画出演作は、『聖の青春』(16/森義隆監督)、『パンク侍、斬られて候』(18/石井岳龍監督)、『菊とギロチン』(18/瀬々敬久監督)、『コンフィデンスマン JP』シリーズ(19~20/田中亮監督)、『おらおらでひとりいぐも』(20/沖田修一監督)など。公開待機作に、『峠 最後のサムライ』(小泉堯史監督)などがある。
-COMMENT-
4人のボクサーの人生が映っていました。
教訓めいた事も、下手したら感動すらも、お届け出来ないかも知れません。
しかし、紛れもない事実として、人生を賭けて戦う人々が映っていたこの映画を、私は愛おしく思います。
柄本時生
(楢崎剛役)
1989年10月17日生まれ、東京都出身。
2003年、映画『すべり台』(05/アベユーイチ監督)のオーディションに合格し、主演デビューを果たす。『俺たちに明日はないッス』(08/タナダユキ監督)など同年数々の映画で活躍し、以降、舞台、映画、テレビドラマと幅広く活躍。近年の主な映画出演作は、『聖の青春』(16/森義隆監督)、『彼女の人生は間違いじゃない』(17/廣木隆一監督)、『花筐/HANAGATAMI』(17/大林宣彦監督)、『旅のおわり世界のはじまり』(19/黒沢清監督)、『宮本から君へ』(19/真利子哲也監督)、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(20/大林宣彦監督)、『記憶の技法』(20/池田千尋監督)など。公開待機作には、『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画をつくったら~』(松居大悟監督)などがある。
-COMMENT-
肉体を使う仕事をほとんどしたことが無かったので楽しかったです。
ここまでボクサーを描かれた本はないのかなと。。
ボクシング以外無いんだと言われている感じがしました。静かに起きる衝動を是非。

STAFF&COMMENT

監督・脚本・殺陣指導:𠮷田恵輔
1975年、埼玉県出身。
東京ビジュアルアーツ在学中から自主映画を制作する傍ら、塚本晋也監督の作品の照明を担当。映画のほかにもプロモーション・ビデオ、CMの照明も経験。06年には自らの監督で『なま夏』を自主制作し、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のグランプリを受賞。その後も塚本作品などで照明技師として活動し続け、08年に小説「純喫茶磯辺」を発表。同年、自らの監督で映画化して話題を集める。その他の監督作品に、『さんかく』(10)、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(13)、『麦子さんと』(13)、『銀の匙 Silver Spoon』(14)、『ヒメアノ~ル』(16)、『犬猿』(18)、『愛しのアイリーン』(18)など。本作の他、古田新太と松坂桃李が共演する『空白』の公開も控えている。
-COMMENT-
中学生の頃から現在まで、30年近くボクシングをやっています。何箇所もジムを渡り歩き、沢山のボクサーと出会い、見送っていきました。そんな自分だからこそ描ける、名もなきボクサー達に花束を渡すような作品を作ったつもりです